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「小さい頭巾」と「枕の掃除」と「トンヌラ」による、映画のレビューブログ。楽しければいいじゃない。そんな我々の遊びの場。Twitter ID:@coldish1014

傑作の誉れ高い、クレヨンしんちゃんシリーズが生み出した日本映画史屈指の名作!

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どうも、『枕の掃除』です。
大人になればなるほど、「あのころはよかった」とか「あのころに戻りたい」とか美化された過去に思いを馳せることはしばしばで、現在や未来から目を背けたくなることも多分にあります。そんなオトナ達の想いと、過去を持たないコドモ達の壮絶なドラマを描いた傑作映画を今回は紹介したいと思います。

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲

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あらすじ
人の温かみや未来へまだ希望を持てた、想いでの過去をもう一度蘇らそうと企む組織、イエスタディ・ワンスモア。彼らの企みにより街のオトナ達はみな子供に戻ってしまう。しんのすけ達はオトナ達を救いだし、未来を手に入れることができるのか。

 



お下品な幼稚園児、野原しんのすけとその家族を中心としたドタバタギャグアニメの劇場第9作目。

歴代クレヨンしんちゃんシリーズの中でも傑作の誉れ高いオトナ帝国ですが、この映画を一言で表すと、「未来へ開けた映画」と言えるのではないでしょうか。



「想いでは優しいから甘えちゃダメなの!」とはFF10の名台詞の一つですが、誰しもが過去や想いでにすがりたいときはあると思います。

しかし想いでとは、えてして優しいものです。実際にはそんなに優しいものではなかったかもしれませんが、過去というものは時が経つにつれて次第に美化されていきます。



そんな美化された過去に対抗するものとしてこの映画で描かれているのが「家族」です。それはこの作品も観れば明らかです。
初めは誰しもが子供で、それこそまだ過去と言うものに囚われえることなく今を生きていますが、次第に出会いや別れを繰り返して成長していきます。そしていずれは自分が親から愛情を受けて育ったように、自分自身が親となり、同じように子供へ愛情を注いでいく。

 


確かに、いつまでも子供でいることは自由で気ままで楽しいことかもしれませんが、だけど、「俺の人生はつまらなくなんか無い! 家族がいる幸せを、あんた達にも分けてやりたいぐらいだぜ!」というヒロシの言葉

 

 

そして何より「オラ、大人になりたいから・・・大人になって、お姉さんみたいな綺麗なお姉さんといっぱいお付き合いしたいから!!」というしんのすけの言葉、これらの言葉にすべて詰まってるじゃないですか!

 


共に未来を歩んでいく家族との時間は代えがたいものじゃないんですか!いくら過去が美しかったからと言って、大人になりたいという子供の未来までは奪えないでしょ!ってことなんです。

そして未来から目をそむけて逃げようとする敵に対して放つしんのすけの台詞、「ずるいぞ!」にはドキッっとさせられた人も多いのではないでしょうか。こうしたしんのすけの言葉は、子供としての純粋な想いと同時にきちんと大人の心に届くものになっているところがこの作品の素晴らしいところだと思います。


ここまで聞くと、それをクレヨンしんちゃんでやる意味は?とか子供向けアニメなのに大人に寄りすぎてるんじゃないの?と思われる人も多いと思います。しかし私はその疑問に対してきっぱりとNOを突き付けたいと思います。



まず、このテーマをクレヨンしんちゃんで描く意味ですが、クレヨンしんちゃんがこれまで漫画、アニメと長年愛されてきた作品であり、映画を観ただけで彼らのバックボーンが透けて見えてくるところにあると思います。

 

だからこそ、父ヒロシがあるきっかけを通して大人としての自分を取り戻す、あの感動的なシーンに重みや厚みが生まれるんだと思います。

 

 

長年愛されてきたアニメという意味では、ドラえもんなども挙げられると思いますが、ドラえもんで家族をテーマにすることはなかなか難しいと思います。なぜならドラえもんは親から離れて友達と冒険することで物語を進めていくタイプのアニメだからです。もちろんドラえもんの中にも家族をテーマにした作品もありますが、クレヨンしんちゃんの方がテーマとの食い合わせがよいと言えると思います。


次に大人向けに作られ過ぎているんじゃないかという件ですが、私はそんなことはないと思います。なんといってもクレヨンしんちゃんと言えば大人も苦笑いするようなギャグこそが一番の魅力だからです。

 

ストーリーもさることながら、やはりギャグが面白いのがクレヨンしんちゃんシリーズの安心できるところだと思います。かすかべ防衛隊の5人がバーの雰囲気にのまれておかしなテンションになってしまうところはニヤリとさせられるし、バスで逃亡するシーンもかすかべ防衛隊個々人の性格を活かしたギャグになっていて面白かったです。


またギャグ以外にも、画の迫力が人を引き付けるのも魅力の一つです。特に終盤の電波塔を登るシーンはアニメでしか表現しえない迫力があります。劇画とはまた違う、線の太さ、ほころび、スピード感、走っているだけなのに物語のクライマックスとしての説得力が伝わってきます。

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ストーリー、アニメーション(画)、ギャグ、どこをとっても抜け目ない、素晴らしい作品です。


最後に、この映画がクレヨンしんちゃん映画だからと言って舐めている人伝えたいことがあります。「所詮子供向けでしょ?」とか、言いたいことはわかります。でも、関係ないんです。面白い映画は、アニメだからとか、邦画だからとか、子供向けだからとか、このジャンルだからとか、そんなこととは関係ないんです。それがたとえ日本の子供向けギャグアニメだったとしても、面白い映画は存在するんです。もしクレヨンしんちゃん映画だからと変な偏見を持っていたとするなら、それはもったいないことです。そんな偏見は捨てて、一度見てみてください。きっとその考えは変わるはずですから。